沖縄本島から南西300km付近にある宮古諸島を構成する島の1つである下地島。島の西側に位置する下地島空港が、島の面積のおよそ3分の1を占める。長らく日本のエアラインパイロット訓練用空港として使用されてきたが、2019年から宮古諸島の第2の玄関口として旅客用空港となった。
空港施設の運営は三菱地所をはじめとする民間企業の出資により新たに設立した下地島エアポートターミナル株式会社が担い、2019年の供用開始に合わせて旅客ターミナルビルが新設された。「空港から、リゾート、はじまる」をコンセプトに南国リゾート・観光を全面に出した施設やサービスが提供されている。
また、飛行機に乗らない人も楽しめるよう、一般エリアにカフェやレストラン、ショップが充実しているほか、子供も楽しめるクラフトワークショップ、レンタサイクルなど下地島空港が目的地となるようなサービスやイベントも行われている。
宮古諸島の豊富な観光資源を武器に、民間企業の事業経営やノウハウを活かした新しい形のリゾート空港の実現を目指す2022年11月の下地島空港をレポートする。
空港概要
沖縄県・下地島空港 -Shimojishima Airport-
空港っぽくない空港
2019年にできた新しい旅客ターミナルビルは良い意味で従来の空港らしさを感じさせない。無機質なコンクリートの柱に、沖縄らしい赤煉瓦の屋根、南国リゾートホテルのような植栽などが取り入れられ、そのどれもが主張しすぎていない。空港にも関わらずゆったりとした時間が流れ、落ち着きと安らぎを感じることができる。
就航数も少ないことから空港としての機能は最小限にとどめられており、特定のエアライン専用カウンターはなく、時間帯に合わせて流動的に利用する仕組みで、合理的な施設運用が行われている。
規模の小さい空港では珍しく、保安検査通過後のエリアが広く、搭乗開始までゆっくりと過ごすことができるのも特徴のひとつ。フロア中央に設置されたセントラルバーを囲むようにしてカウンター席やテーブル&チェア席、ソファー席が用意され、各々の過ごし方に合わせて選べるようになっている。
観光客のための動線デザイン
下地島空港を利用する大半の旅客は観光客と想定し、ターミナルビルの出入口に最も近いカーブサイドはレンタカー専用の駐車場を配置している。
空港の到着口を出てすぐそばにレンタカー受付があり、その数十メートル先でレンタカーに乗車できるため、早ければ空港に着いてから数分で旅をスタートできるのだ。
自然環境への配慮と工夫
豊かな自然を観光資源としていることや時代背景が後押しして、空港内には環境へ配慮したデザインが見られる。施設の屋根の構造材に、空港ターミナルビルとしては日本で初めてCLT(直行集成板)を採用するほか、地中熱を利用した空調設備などが導入されている。
保安検査通過後の制限区域内には、広々とした水上ラウンジや緑が美しい中庭があり、最後までここが自然豊かな南国であることを感じさせてくれる。
世界的に旅客数が回復する中で、下地島空港が掲げるコンセプト「空港から、リゾート、はじまる」が地方空港の新たな潮流となるのか、今後も目が離せない。