『Airport Report』対馬空港 Feb,2022

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国境の島とも呼ばれる対馬は九州と韓国の間の対馬海峡に浮かぶ島で、福岡県・博多から約130kmほど北西に進んだ先にある。対馬は長崎県に属しているが、福岡県からのアクセスのほうが充実している。高速船なら2時間15分、福岡空港から30分で行くことができる。長崎からは空路のみ運航しておりおよそ35分で到着することができる。

対馬は上島と下島に分けられており、対馬空港はその間に位置している。日本で対馬のみに生息するツシマヤマネコがいることから空港の愛称として「対馬やまねこ空港」と名付けられている。路線は福岡と長崎の2便で、1日4〜5往復ほど運航中。ただし、コロナ禍の影響を受けて減便している日もある。

運航は長崎空港を拠点とするORCオリエンタルエアブリッジ社が担っており、ANAがコードシェア便として共同運航している。空港の滑走路は1,900mとジェット機にも対応できる長さを持つが、現在はボンバルディア社のプロペラ機による運航が実施されている。

コロナ前は26万人弱の旅客者数に達していたが、2020年には15万人へと大幅に減少。静寂の中にプロペラ機のエンジン音が響く2022年2月の対馬空港をレポートする。

空港概要

長崎県・対馬空港 -Tsushima Airport-

随所に個性が光る離島空港

対馬空港のスタッフは実は、楽しい方々が多いのだろうか。じっくり空港を歩き回っていると随所に空港利用者を楽しませてくれる工夫が施されている。東京のテクノロジー企業チームラボの記念撮影用のカメラが設置されていたり、売店には名産品の真珠がガチャガチャで購入(1回1,000円)できたり、怪しさ満点の対馬兜キャップがなかなか良い価格で販売されていたりと、空港スタッフの個性を感じることができる。

また、愛称が「対馬やまねこ空港」とあって、フロアの床にはやまねこの足跡がちらほら見られる。事業性や効率性を求める空港では、採用されにくい取り組みがここ対馬空港では行われており、空港を少しでも楽しんでもらいたい気概を感じることができる。

搭乗直前までさよならを言える場所

対馬空港は一般区域(誰でも入ることができる場所)と制限区域(保安検査通過後の場所)は透明のガラスで仕切られているため、旅立つ人と見送り人は搭乗直前まで、顔を合わせていられることができる。子供や孫を最後まで見届けたい祖父母にとっては最高な環境だ。遠距離恋愛のカップルにとってもギリギリまでお互いの顔を見ていられることは、切なくも愛おしい時間でもある。便利さやスマートさだけを追い求めず、利用者の心に寄り添った空港づくりが魅力になる日が来るかもしれない。

展望デッキはありません

飛行機ファンや空港好きは要注意。対馬空港には展望デッキがない。ターミナル施設の端に屋上へつながる外階段があるが、2階より上の階には登ることができない。航空機を撮影する場合は、ターミナルを出て右方向(旧ターミナル施設の方向)へ行くとフェンス越しだが撮影が可能だ。もしくは、保安検査通過後の待合スペースからガラス越しに撮影することになる。

ターミナル施設の規模拡張がカギを握る

ああ長崎の離島空港である五島福江、壱岐、対馬(※定期便が運航休止中の空港は除く)3空港の中で対馬空港はコロナ禍以前、旅客者数が年間26万人と最多であった。しかし、ターミナル施設は五島福江(年間17万人)とほぼ同じ規模だ。

航空需要が回復したとき、韓国や近隣アジアから観光客を最大限取り込むためには空港内の処理効率を上げるとともに、施設規模の拡張も必須になると考えられる。駐車場のスペース確保や二次交通機関への接続性向上など、施設以外にも課題が多くあると思われる。利用者に寄り添う対馬空港の次の新しい展開を楽しみにしたい。

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