宮崎県の南東部に位置し、日向灘に突き出すようにして設置された滑走路がある宮崎空港。国内線は東京、大阪、名古屋、福岡、那覇などの主要都市を、国際線はソウル(仁川)と台北への路線を有している。2019年には年間総旅客者数が過去最高の340万人に達するなど順調に拡大。新型コロナウイルス感染拡大によって旅客者数は91万人まで減少したが、現在は徐々に回復しつつある。
マンゴーや地鶏などの特産品に加え、日向、木崎浜、白浜といった人気のサーフスポットや国内屈指のゴルフ場であるフェニックスカントリークラブがあり、シーズンともなるとサーフボードやゴルフバッグを持つ旅客の姿を多く目にする。
宮崎空港の旅客ターミナルビルから滑走路を挟んだ北側には、独立行政法人航空大学校の宮崎本校があり、航空会社のパイロット養成が行われている。宮崎空港の展望デッキには、航空大学校・仙台キャンパスで東日本大震災の津波被害を免れた訓練機が展示されている。現在は休止中だが、訓練機のコックピット見学や搭乗体験もでき、家族連れの子ども達に人気のスペースとなっている。
旅客ターミナルは1階に出発手続きカウンターと到着ロビー、2階に出発ロビーと売店などのショップ、3階にレストランとギャラリー、4階が展望デッキとなっている。ターミナル中央部は吹き抜けで、天井はアーチ状のガラス張り、上階層の窓はステンドグラスになっており、陽の光がたくさん差し込まれることもあり、館内は明るい空間になっている。
空港概要
様々なイベントが毎週のように行われる
宮崎空港では何かしらのイベントが常に開催されている。この夏休みシーズンは、サマーアイランドと題し宮崎県ならではのグッズや洋服が販売。人気ゲームのキャラクターともコラボしたイベント会場は、家族連れで賑わいを見せている。イベントスペースの場所もよくできており、2階出発ロビーへエスカレーターで向かう旅客はほぼ100%このイベント会場を目にするため、少しでも時間がある旅客の多くが立ち寄ってしまう動線になっている。
また3階にあるエアポートギャラリーは、ほぼ毎月異なるアーティストによる作品が展示されている。3階という場所のせいか訪れる人はそこまで多くないが、何もなければ殺風景な廊下を個性的な作品が華やかにしてくれている。
神話とステンドグラス
数々の神話が残る宮崎県ともあり、空港内は神話コンテンツが充実している。まず目を見張るのは、吹き抜けの天井に見える日向神話ステンドグラスだ。日本最古の歴史書「古事記」や「日本書紀」に記される八百万神が色鮮やかに描かれており、太陽の光が差し込むことで空港全体に彩りを与えてくれる。ステンドグラスの原画は藤城清治氏が、製作は臼井定一氏が行い、令和元年5月に完成した。
また、宮崎空港ならではのコンテンツとして「からくり時計」がある。朝7時から夜9時まで、1時間ごとに約2分間、ステンドグラス下のからくり時計が時を刻む。それは「夢かぐら」と呼ばれ、岩戸神楽にまつわる神話がテーマとなっている。ある時、機嫌を損ねた天照大御神(アマテラスオオミカミ)が天の岩戸(アマノイワト)に隠れたため、世界が暗闇に包まれてしまったのだが、雨宇受売命(アメノウズメノミコト)と天之手力男命(アメノタヂカラオ)が「舞い」を披露したところ、天照大御神が顔を出し、世の中に光が戻ったという内容だ。からくり時計は、その時の「舞い」をモチーフにしているという。定刻になると館内に突然、大きな音が鳴り出すため、知らないとびっくりするが、見られる機会があれば足を止めて見る価値はあるだろう。
日向(ひなた)を体現する空港ターミナル
岩戸神楽の神話にもあるよう宮崎県は「日向の国」というコンセプトを大事にしており、空港もどこか温かさを感じられるような工夫が施されているように思う。今では地方空でも少なくなったパラパラ形式のフライトインフォメーションや、保安検査後の制限エリアと一般エリアとの間で会話できる「もしもしコーナー」があったり、保安検査場には地元・日南の木材を活用した意匠デザインが行われるなど何気ないところに昔の懐かしさや人や自然の温もりが表現されており、空港を利用する人たちをほっこりさせるような「ひなたの空港」が体現されている。