東海地方・伊勢湾に浮かぶ人工島に中部国際空港がある。知多半島の西側に位置し、中部エリア最大の経済圏である名古屋市内から鉄道で約30分でアクセス可能だ。2021年の総旅客者数は254万人。パンデミックの影響により主力路線であった国際線の大半が休止。結果、2019年の1,345万人から80%以上減少している。
日本に4つある会社管理空港のひとつで、中部国際空港株式会社が事業運営を行なっている。1998年に会社が設立。成田国際空港、関西国際空港に続いて、中部経済圏の空の玄関口として2005年に中部国際空港が開港。日本の中央部「Centre」にある空港「Airport」を組み合わせ「Centrair(セントレア)」と呼ばれている。
1934年に現・小牧市に開港した名古屋飛行の容量限界に伴い、中部国際空港が新たに建設。その後、航空需要の高まりを受け、さらなる空港容量の拡大が求められており、2本目の滑走路建設計画が進行中。国際線回復の見通しがいまだ不透明な中、規模拡張に向け準備を進める2022年10月の中部セントレア国際空港をレポートする。
空港概要
愛知県・中部国際空港 -Chubu Centrair International Airport-
羽田空港T3と成田空港を足して2で割った空港
設計会社の手のクセとでも言うべきか、訪れて感じたターミナルの印象は羽田空港ターミナル3と成田空港を足して2で割ったようなターミナルだということ。羽田と成田を担当している設計会社が中部国際空港も手がけていることもあり雰囲気や構造、デザインがどことなく似ている。
階層上の吹き抜けで、1階に到着フロア、2階に出発フロア、3階にショッピング・レストランおよびスカイデッキという構造は日本らしい空港を感じさせる一方で、どこの空港に行っても同じ感じになるのは否めない。汎用的デザインは、旅客が迷いにくいという利点がある反面、個性がないとも言われてしまうのは悩ましい部分だろう。
航空専門のレーティング会社で英国のSkytrax社が毎年発表するベストエアポートランキングではリージョナル空港部門で8年連続No.1に輝いている。また、総合ランキングでも世界第12位の位置につけており、日本の空港では羽田、成田、関西国際に次いで4番目となり、国際的にも評価されている空港のひとつだ。
実物のB787航空機が目の前に
他の空港にはないコンテンツがここ中部国際空港にはある。それが、FLIGHT OF DREAMSだ。特設された格納庫のような広い建物には、ボーイング社が製造するB787ドリームライナーの初号機が展示されている。エンジンを正面から間近で見ることができたり、コックピットの見学もできるなど大人も楽しめるようになっている。
また、様々な遊具で遊べるキッズエリアが充実しているほか、ボーイング社が本社を構える米国・シアトルの雰囲気を楽しめるカフェ・レストランやショップが併設されており、休日ともなると家族連れのお客で賑わっている。
とにかく遠い第2ターミナル
中部国際空港には各国のフラッグキャリアが主に利用する第1ターミナルとLCCが主に利用する第2ターミナルがある。今回利用した第2ターミナルは、空港に乗り入れる鉄道駅のあるアクセスプラザから徒歩10分とそれなりの距離がある。時間に厳しいLCCもあるため、空港へ到着する時間には注意が必要だ。
さらに、第2ターミナルの保安検査場を通過したあと、搭乗ゲートラウンジまでは約500m(徒歩6分)も歩く必要がある。大きな手荷物を持った旅客や子供を連れた親は一苦労だろう。格安エアラインとはいえ、発着数がまだ少なく駐機スポットに余裕がある中で、柔軟に対応できない様子は、組織構造上の何か大きな課題があるように感じてならない。
美しい夕日を楽しめる展望デッキ
セントレア空港はスカイデッキから滑走路までの距離が約300mと、日本で最も近くで航空機の離着陸を楽しめる空港だ。海外エアラインの乗り入れも多いことに加え、ボーイング社の専用貨物機であるB747-LCFを日本で唯一見られる空港のため、多くの飛行機好きや写真家たちがシャッターチャンスを狙っている。
また、伊勢湾に向かって西方向に伸びるスカイデッキからは美しい夕日を楽しむことができる。名古屋港を出発したコンテナ船や対岸に見える三重の街を背景に、夕日に照らされる航空機は交通インフラの発展を称賛しているかのようなシーンだ。
1日として同じ景色になることがない黄昏時を美味しい食事と素敵な音楽でゆっくり楽しみたいと個人的には思うが、今のところそのような空間はない。今後に期待したい。
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