『Airport Report』壱岐空港 Feb,2022

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長崎県に72※1あるとされる有人島の1つである壱岐島。日本最古の歴史書「古事記」の神話によると、新たに作られた8つの島のうち、5番目の島が「伊伎嶋」で、現在の「壱岐島」にあたると言われている。

壱岐島は長崎県に属するが、福岡市から北西に約76km、佐賀県唐津市の港から約40kmの位置にあり、船も充実していることから、長崎県外の都市からのほうがアクセス性は高い。ただ、船の場合は少なくとも1時間はかかるが、長崎空港から壱岐空港のフライトは30分で到着できる。

壱岐空港は島の南東部に位置し、近くには大浜や筒城浜といった美しいビーチがある。船による利便性が向上したことで旅客数は減少。2003年に福岡便が休止になって以降、ORCオリエンタルエアブリッジ社によって長崎便のみが1日2〜3往復している。

需要減とパンデミックによる影響が決して小さくない2022年2月の壱岐空港をレポートする。

※1 長崎県 しまの状況 (https://www.pref.nagasaki.jp/shared/uploads/2021/03/1616654863.pdf)

空港概要

長崎県・壱岐空港 -Iki Airport-

極小サイズの離島空港

こじんまりとした建物には、航空機運航のために必要な設備と機材が最小限の数で用意されている。到着後に受け取る預け入れ荷物は、地上スタッフによって運ばれ、カウンターで手渡しされるスタイルだ。出発と到着は同じフロア(1階)で、建物に入って右側が出発、左側が到着というシンプルこの上ない設計となっている。

フライト運航は長崎県に拠点を置くORCオリエンタルエアブリッジ社だが、ANAがコードシェア便として入っているため、出発カウンター横には自動チェックイン機が1台設置されている。空港の雰囲気のせいか見慣れた自動チェックイン機がやたらと先進的な光景として目に映る。

保安検査を抜けると、まるで病院の待合室のような空間が広がる。きれいに並べられた長イスに、液晶テレビ、観光パンフレットのラックと日本らしいシーンの中で、何でもない時間をゆっくりと過ごすのが壱岐空港なのだ。

外階段でつながる展望デッキ

管制塔を除いて壱岐空港ターミナルビルは1階建てで、屋上が展望デッキとなっている。展望デッキへはターミナルビルを出て、外階段を登って行くことができる。フェンスで仕切られた屋上からは正面にランウェイと駐機する航空機が、左にはほぼ目線と同じ高さにある管制塔を見ることができる。

航空機が駐機するエプロンとデッキの距離は近いため、離着陸前後に航空機がタクシングしているときは迫力を感じられるだろう。航空機への搭乗および降機に際してボーディングブリッジはないため、エプロンを歩いて移動することになる。飛行機好きであれば、ボンバルディア機をかなり近い距離で撮影することも可能だ。

二次交通の課題

地方空港、とくに離島空港ともなれば自家用車以外の二次交通を充実させるのは至難の業だ。ただでさえ少ない旅客に対して、それぞれのニーズを満たすような二次交通の手段と時間的なタイミングを合わせるのは、現時点では費用対効果が得られない。そのため多くの空港で、出発・到着の便に合わせて、必要最低限のバスを運行している。

ちょっと早く空港へ行く、あるいはギリギリに空港へ行くができるのは自家用車の旅客のみ。バス利用者は、市街地から空港行きのバスを乗り過ごしてしまうと、タクシー一択ということになる。レンタカー利用者も、空港でレンタカーの乗り捨てができないことが多く、最寄りのレンタカー店舗に立ち寄り、空港間の送迎サービス(ほとんど無料)を利用することとなる。

県民の輸送手段としての空港であれば、現状のままでも特に問題ないと思われれる。けれど、国内外のゲストを呼び込み、島を活性化していく方向性が検討されるのであれば、二次交通へのスムーズかつ柔軟な接続性は旅客体験の向上やリピーター獲得に欠かせない点となるだろう。

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