スペイン第二の都市・バルセロナは人口およそ164万人だが、バルセロナ都市圏で見ると500万人以上とも言われ、年間の観光客数は1,500万人を超える欧州において人気都市の1つである。
バルセロナの空の玄関口はバルセロナ・エル・プラット空港で、バルセロナ市街地の南西12kmに位置している。正式名称はジュセップ・タラデラス・バルセロナ・エル・プラット空港という。バルセロナが属するカタルーニャ州の初代大統領の名前が2019年に付け加えられた。
国際空港であるバルセロナ・エル・プラット空港には、85の航空会社が乗り入れ、188の目的地へと就航しており、年間の旅客者数は約5,500万人に達する。平行する2本の滑走路と横風用の滑走路が1本の合計3本、旅客ターミナルはターミナル1と2で運用されている。
ターミナル1がメインターミナルで、ターミナル2はLCCやチャーター機の運航で使用されている。どちらのターミナルもバルセロナ出身の建築家リカルド・ボフィル氏が設計を手がけている。ターミナル間の移動には無料のシャトルバスを利用することができる。
およそ55万㎡の面積を有するターミナル1は、2009年にオープンしている。15年が経過した現在、施設規模に対する旅客の取り扱い容量が、早くも上限に近いていることもあり、ターミナル施設の拡張も計画されているという。
オーバーツーリズム問題を抱える観光都市バルセロナ。世界中からやってくる旅客にとって、都市の顔とも言えるバルセロナ・エル・プラット空港の2024年9月のターミナル1をレポートする。
空港概要
スペイン・バルセロナ・エル・プラット空港 -Barcelona-El Prat Airport-
明るく開放的な空間デザイン
地中海性気候に属するバルセロナは温暖で晴天率が高い地域として知られている。バルセロナ・エル・プラット空港はその特徴を活かした設計がなされており、ターミナル1は外光をうまく取り入れることで日中は照明をなるべく使用しないようにデザインされている。
陽の光がターミナルに差し込むと、白い天井に反射し、ターミナル全体を明るくする工夫がなされている。夜間は外の光はないものの、商業施設やディスプレイ広告の明かりが全体を明るくし、間接照明を使うことで落ち着いた雰囲気を演出している。


無駄のない最小限の案内サイン
ターミナル1の案内サインは”うるさくない”。必要なところに必要なだけ設置されている印象だ。空港に到着してから目的地までの動線は明確で、かつ広いスペースが確保されており、メインとなるルートを辿れているのか感覚的にわかりやすい。
ゲートや出口、トイレのサインも、メインとなる動線上にのみ設置され、人通りが少ないルート上にサインがほとんどない。案内サインがないゆえに、旅客はここがメイン動線でないことをすぐに理解できる。また、過剰な案内サインをなくすことは、管理コストの削減にも繋がるため、空港運営側にとっても大きなメリットがある。


欧州屈指の観光都市・バルセロナ
北半球の旅行シーズン(6月〜10月)は欧州の主要都市は観光客で溢れかえる。特にバルセロナは、気持ちの良い気候に、多様な文化や豊富なアート、食通を唸らせる食事を安く楽しめることもあり、近年はオーバーツーリズム状態だ。
それは空港を見るとよくわかる。旅行シーズン終盤でも搭乗ゲート前の待機スペースは満席で、カフェの席もほぼ埋まっている状態が続く。飛行機の発着効率を上げ、ターミナル内の旅客処理をスムーズにしているが、現状のままでは旅客から不満の声が出てくる可能性も否めない。
今後、施設の拡張も予定されているというが、急増する旅客のスピードに対応できるのか、バルセロナ・エル・プラット空港の実力が試される。

















