『Airport Report』 マドリード・バラハス空港 ターミナル4&4S Sep,2024

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スペインの中央部に位置する首都マドリードは、人口およそ325万人で国内最大規模の都市である。空の玄関口となるマドリード・バラハス空港は、年間で約6,000万人もの旅客を取り扱うヨーロッパの中でもトップクラスの大規模空港である。

乗り入れる航空会社は90近くあり、200を超える地域へ就航しておりハブ空港として重要な役割を果たしている。敷地面積は3,000ha以上、大型旅客機の離着陸が可能な長い滑走路を4本を有し、4つの旅客ターミナルが24時間休むことなく稼働している。

中でも2006年に建設されたターミナル4と4Sは、面積75万㎡の広さがある巨大な施設で、スペイン人建築家のアントニオ・ラメラやイタリアの建築家であるリチャード・ロジャース氏、さらにはスペイン出身の建築家ルイス・ビダル氏らによってデザインされた特徴的な屋根がバラハス空港の象徴ともなっている。

メインターミナルであるターミナル4は、スペインのフラッグキャリアでありイベリア航空とワンワールドに加盟する航空会社が主に利用している。本館から約2km離れた位置にサテライトであるターミナル4Sがあり、無料のAPM(自動ピープルムーバー)を使って移動できる。所要時間は片道およそ3分ほどで、24時間運行している。

ターミナル4へのアクセスに関しては公共交通機関が充実しており、地下鉄(8番線)・鉄道(C1線)、バス(203エアポートエクスプレス)どれでもアクセス可能で、終着/始発駅となっている。駐車場も短期・長期、格安、VIPなど様々な利用形態が用意されている。

観光大国スペインの首都マドリードにおいてもオーバーツーリズムの問題が顕在化している。その影響がバラハス空港にも及んでいることは間違いない。数多くの旅客を受け入れ、安全にかつスムーズに出入国できるよう工夫を凝らす2024年9月のターミナル4&4Sをレポートする。

空港概要

スペイン・マドリード・バラハス空港 -Madrid-Barajas Airport-

特徴的なデザイン空間を楽しむ

ターミナル4の最大の特徴は独創的なデザインの屋根だ。ゆるやかに続く曲線美に、木目調デザイン、ブラインド仕様の天窓から差し込む陽の光は美しく、空港を建築として楽しめる空間が演出されている。

晴天率が高いという気候特性を活かし、日中は自然光をうまく取り入れており、人工照明とは異なる優しく明るい雰囲気が空港全体を包みこんでいる。省エネルギー性の観点においても優れていると言えるだろう。

また、スペインらしくカラフルなデザインが印象的だ。ターミナル4を示すアイコンはオレンジ、ターミナル4Sは水色、搭乗ゲートのカテゴリーは赤、青、黄、緑、深緑とあらゆる色が使われている。

あてにすべき色が決まれば確かに迷うことはないだろう。しかし、黄色の背景に白文字は、何が書いてあるのはほとんど見えない。ビジュアルデザインと機能性のバランス改善を期待したい。

1つひとつが大きくて視認性が高い

バラハス空港はターミナルが広いこともあり、案内サインはそれぞれが大きく、一目見ればどこに向かうべきなのか把握できる。国際空港として多言語対応しており、特に旅客が多い動線の案内サインには、中国語、韓国語、日本語、アラビア語などで表示されている。

また、案内サインのまわりには広告や注意書きなども少なく、かつ重要な内容を大きく、それ以外を小さくするなど強弱もうまくつけられており、旅客は迷いようがない。これは、スペインを中心に世界の各都市で空港運営を手掛けるAena社のノウハウが詰まっているように感じられる。

セルフサービス化が進む空港体験

世界の空港はいま、セルフ化に向かっている。ここバラハス空港も例外ではない。チェックインカウンターは当然ながら、セキュリティ前のボーディングパス確認や搭乗直前の本人確認など、デジタル機器を導入し、セルフで行うことができる。

この背景には、パンデミックを経て急速に回復する旅客数に対して、空港は人手不足が続いていることがあげられる。空港側は働き手を求めているが、不安定な雇用に対して懸念を示す人は多いのが事実だ。

今後はさらに空港のあらゆる機能がセルフサービス化されていくだろう。アメリカではセキュリティチェックをセルフ化する検証も始まっている。セルフ式のガソリンスタンドのように、近い将来に人がいなくても稼働する空港が出てきても何ら不思議ではない。

その未来を見据え、マドリード・バラハス空港は着々と準備を進めている。

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