イギリスを構成する国の1つイングランドにある首都ロンドン。世界各地から観光やビジネスで訪れる目的地であることに加え、ヨーロッパや世界の主要都市への輸送拠点の役割を担う事実上の世界都市である。
ロンドン中心部から西へ24km先にあるロンドンヒースロー空港は、年間旅客者数およそ8,000万人を誇るヨーロッパ最大の空の玄関口である。3,500m超の滑走路を2本と、4つの旅客ターミナルを有し、214の就航路線が89社の航空会社によって運航されている。
また、ヒースロー空港は国際線の利用者数が全体の約95%を占める国際空港で、2023年はドバイ国際空港(アラブ首長国連邦)に次ぐ国際線旅客者数を記録している。
4つの旅客ターミナルは航空連合ごとに分かれており、ターミナル2にはスターアライアンス系、ターミナル3はワンワールド系、ターミナル4はスカイチーム系の航空会社が主に利用している。ただし、ターミナル5はイギリスのフラッグキャリアであるブリティッシュ・エアウェイズとイベリア航空(一部)の専用ターミナルとなっている。
なお、ターミナル1は2015年に閉鎖されており、今後ターミナル2の拡張に活用される予定だという。今後さらなる拡張が予想される2024年9月のヒースロー空港ターミナル2と隣接するターミナル3をレポートする。
空港概要
イギリス・ロンドンヒースロー空港 -London Heathrow Airport-
ヒースロー空港で最も新しい”女王のターミナル”
ターミナル2は現在稼働中の4つのターミナルの中で最も新しく2014年に供用を開始している。当時はエリザベス女王が在位中であったことから「クイーンズターミナル」としても知られている。
スペインの建築家ルイス・ビダルによってデザインされたターミナルは、洗練されたロンドンを象徴するかのようにシンプルかつスタイリッシュな空間が広がる。
ターミナル面積はおよそ40,000㎡で、屋上には124枚のソーラーパネルが設置されている。2018年には、グリーンガスで稼働する最初のターミナルとなるなど持続可能な空港施設運営にも力を入れている。
航空機の駐機スポットはターミナル2本館とT2Bと呼ばれるサテライトがあり、主にスターアライアンスに加盟する航空会社が利用している。
ターミナル2の一般エリア(保安検査前の区域)に入居するカフェには、コーヒーの焙煎機が設置されており、空港という広くて天井が高い空間特性を活かして、出発まで時間をやりくりしたい旅客を楽しませている点がいかにも海外空港らしい。
映画ラブ・アクチュアリーのワンシーン
「世の中に嫌気がさしたら、ヒースロー空港の到着ゲートへ」
2004年に公開された映画「ラブ・アクチュアリー」での冒頭のセリフだ。到着ゲートには家族や恋人、友人との再会を果たし、抱き合う様子が描かれており、そこには愛が満ち溢れていると表現している。
その到着ゲートのシーン撮影にヒースロー空港のターミナル3が使われている。現実は映画で見た光景ばかりではないが、日本の空港の到着ゲートに比べると、どこか心温まるシーンに出くわすことが多いかもしれない。
ターミナルは少し古いこともあり、天井が低く、案内サインの内容や配色もわかりづらい部分はあるが、今後順次改修される計画となっている。
ターミナル3を利用するメインの航空会社はイギリスを拠点とするヴァージン・アトランティック航空である。地上1階の出発フロアの3分の1をヴァージン・アトランティック航空が占めており、ヴァージンのためのターミナルといっても過言ではない。ヴァージンとそれ以外の航空会社が利用するエリアの内装や雰囲気は全く異なり、同じターミナルとは思えないほどだ。
少しタフなターミナル間移動
ターミナル2と3は地下の連絡通路でつながっており、徒歩で移動することができる。しかし、その距離は決して近くなく、徒歩で10数分はかかる。動く歩道が設置されているものの、変わり映えしない地下通路のため長く感じる。
地下鉄の駅がターミナル2と3の間にあり、ピカデリー線とエリザベス線およびヒースローエクスプレスが「ヒースローターミナル2&3駅」に停車する。ピカデリー線はターミナル2に近く、エリザベス線およびヒースローエクスプレスはターミナル3に近いため、移動距離を最短にしたい場合は目的ターミナルに合わせて路線を選ぶとよいだろう。