高知県南国市にある高知空港。坂本龍馬の出身地であることから愛称として「高知龍馬空港」と名付けられている。1960年に滑走路長1,200mの空港として供用開始。以降、ジェット機対応や旅客増加もあり、滑走路は順次延長され、2004年に現在の長さである2,500mとなった。
コロナ禍前は年間旅客者数が13年ぶりに150万人を上回るなど順調に推移していたが、パンデミックの煽りを受け、令和2年度(2020年4月〜)は約48万人にとどまった。
四国4県の中では最大面積を誇る高知県は、カツオをはじめとする食文化や日本最後の清流とも言われる四万十川など雄大な自然を有するが、国際線の定期便は就航していない。海外ゲストを呼び込める空港になれるか重要な局面にある2022年3月の高知空港をレポートする。
空港概要
食欲を刺激する名産品の数々
高知県に来たならば食の誘惑からは逃れられない。それは高知空港に到着したときから、さらには帰りの便に搭乗するまで続く。それほど高知県には名産品がたくさんある。太平洋で獲れるカツオや四万十産のうなぎをはじめとする新鮮な魚に、甘くて大きい果物や野菜など数日ではすべてを楽しみきれないほど食文化が充実している。
空港2階の商業エリアは高知県の名産品が使われたお土産がたくさん並び、3軒ほどあるレストランはどこもお客さんが入っている。地元の食材や加工品を集めたショップでは、カフェ機能も併設されており、フライト時間までの間に最後の1杯を楽しむ旅客の姿も多く見られる。土佐国には美味しいものがたくさんある、と感じさせられる。
最後まで見送りできる透明の壁
長崎県の対馬空港や福岡県の北九州空港など比較的規模の小さい空港では、保安検査を通過した後でも旅客と見送り客が互いに顔が見えるようあえて透明ガラスの壁にしている。この配慮はニーズを捉えていて、搭乗開始までの間に多くの人が集まり顔を合わせている。3月という季節柄もあり、地元を離れる子どもを見送る親御さんや祖父母の姿も多く見られた。
直営店・地元企業が主体の商業エリア
地方空港の良さの1つとして、レストランやショップは空港ビル会社が運営する直営店舗や高知県に拠点を置く企業のお店を揃えている店だろう。高知空港にはまだ、大手コンビニやグローバル展開するファストフード店はない。高知空港に限らず地方空港の重要な役割は地域活性にある。旅客が増えても、大都市や海外へと利益が流れてしまっては空港の地域貢献は十分とは言えない。ほかの地域から多くの人が訪れる空港だからこそ、地元企業のテナント誘致やPRを行う空港は、ポストグローバルリズムの新しい考え方になるかもしれない。
さて、高知空港の商業エリアは充実しているものの、旅客動線に改善の余地がある。空港到着後、2階(出発・商業エリア)へ上がった後の動線にやや無駄がある。売店やショップが点在しており、見て回るのが手間であることや、フロア内を行ったり来たりすることがあるなど効率的に移動したい旅客にとっては使いづらさを感じることもあるだろう。待機エリアやベンチも多くなく、立っている旅客もしばしば。今後の旅客増加を見据えた空港施設のアップデートが求められるだろう。