英国・ロンドンにあるヒースロー空港は、マイクロソフト社、英国国境警備隊、CITESおよびSmiths Detection社と協力し、野生動物の密輸を空港で阻止することを目的に世界初のAIシステムを試験的に導入。
Project SEEKERと呼ばれる機器は、1日に最大25万もの荷物をスキャンし、空港を通過する貨物や手荷物の中にいる動物を検知するという。検出成功率は70%以上で、特に牙や角など象牙製品の検出に効果が見られたとのこと。密売品の早期発見によって密売者を追跡し、230億ドル(約2兆6220億円)規模の違法な野生動物密売産業に立ち向かうという。
今回ヒースロー空港で行われる試験的導入では、動物や医薬品に使用されている違法な製品を識別する機能が構築されており、2ヶ月間の運用を通してどのような種類の動物でもアルゴリズムを学習できることが実証されているとのこと。
また、英国王室のケンブリッジ公ウィリアム王子は、英国王立財団の「ユナイテッド・フォー・ワイルドライフ・プログラム」の活動の一環として、このAIシステムについて話を聞くためにマイクロソフト英国本社に訪れたとのこと。
ヒースロー空港のセキュリティ担当ディレクターであるJonathan Coen氏は「今回の各社とのパートナーシップは世界で最も貴重な野生動物を保護するために新技術を追求し、密輸業者の一歩先を行くことです。この違法な産業に対してグローバル意義ある行動をとるために、革新的なシステムをより多くの輸送拠点に導入する必要があると考えています。」と話す。
またウィリアム王子はマイクロソフト社への訪問前に「非常に複雑かつ世界的な問題である野生動物の密輸は、輸送、技術、金融サービス、執行機関などの機関が協力して知識、専門性、情報を共有することで、各密売行為の背後にある高度な犯罪ネットワークを検知し、消滅させる能力が高まります。この違法な取引を永久に阻止するために、官民一体の取り組みが不可欠です。」と述べている。
さらにマイクロソフト社のAIスペシャリスト兼Project SEEKERの責任者であるDaniel Haines氏は次のように述べている。「複雑性を極める密売取引ではあるが、適切な場所に適切なAIを活用できれば、取引を防ぐことができる可能性があります。Project SEEKERはデータとAIの可能性を示し、検査スタッフがこれまで以上に野生動物の密売を取り締まることを可能にしています。」続けてこう話す。「乗り継ぎ地点での違法取引の検出率の向上は、ほんの始まりに過ぎません。当局が取得したデータから、密輸の開始場所、ルート、目的地を明確に把握することができるため、犯罪ネットワーク撲滅に効果的で協力的なアプローチになると考えています。」
Heathrow Airport Press Release