イギリス・イングランドの首都ロンドンの中心部から西方およそ24kmに位置するヨーロッパ最大の空の玄関口であるロンドンヒースロー空港。年間旅客者数は約8,000万人で、うち95%が国際線利用者を占める世界トップクラスの国際空港である。
イギリスのフラッグキャリアであるブリティッシュ・エアウェイズを中心に89もの航空会社が乗り入れており、219路線が運航される世界でも有数の”忙しい空港”とされている。2本の滑走路と4つの旅客ターミナルを利用し、日中はほぼ5分間隔で離発着が行われている。
ターミナル2と3はヒースロー空港の中央、ターミナル4は南側、ターミナル5は西側に建設されており、大きくは航空連合ごとに利用ターミナルが分けれれている。スターアライアンス系はターミナル2、ワンワールド系はターミナル3、スカイチーム系はターミナル4で、ターミナル5はブリティッシュ・エアウェイズと一部イベリア航空が利用している。
各ターミナルへのアクセスは、ターミナル2&3駅、そしてターミナル5駅へはピカデリー線、エリザベス線、ヒースローエクスプレスを使って行くことができる。ターミナル4へ向かう地下鉄はピカデリー線とエリザベス線があるが、ターミナル5駅方面のピカデリー線やエリザベス線、すべてのヒースローエクスプレスは、ターミナル2&3駅で乗り換えなければならず注意が必要だ。
今回は、供用開始から38年を経たターミナル4とイギリスのフラッグキャリアがメインで利用するターミナル5の2024年9月時点の様子をレポートする。
空港概要
イギリス・ロンドンヒースロー空港 -London Heathrow Airport-
遅延は付き物のUNDERGROUND
世界で初めて地下鉄が導入されたロンドン。いまやロンドン中心部には地下鉄が張り巡らされ、ここヒースロー空港にもピカデリー線とエリザベス線が乗り入れており、アクセスも便利だ。
しかし注意したい点として地下鉄は遅延や運休が頻繁に起こるため、空港内のアナウンスに気をかけ、別の路線や臨時バスを利用するなど慌てず対応する必要がある。
特にターミナル4駅は、ターミナル2&3駅とターミナル5駅に比べて全体の本数が少なく、ヒースローエクスプレスも通っていないためより注意が必要だ。
スカイチームに加盟する航空会社が利用するターミナル4は、竣工から40年近く経とうとしているが順次改修されていることもあり、きれいで近代的なデザインとなっている。路線は中東系が多いが、エールフランスや大韓航空によるパリ便やソウル便などが運航されている。
広く豪華な”ナショナルフラッグ”ターミナル5
ヒースロー空港のターミナル5は2008年にオープン。イギリスのフラッグキャリアであるブリティッシュ・エアウェイズ専用(一部イベリア航空の便あり)のターミナルとなっている。ターミナル本館と2つのコンコースで構成されており、広さは約35万㎡でヒースロー空港で最も大きいターミナルである。
2012年〜16年まで5年連続でSkytrax社の世界最高ターミナルとして評価を得るなどターミナル5はヒースロー空港で最も充実したターミナルであり、イギリスの顔とも言える場所であることから、その力の入れようは明らかだ。
本館から2つのコンコース(ターミナル5BおよびC)は地下でつながり、旅客は自動旅客輸送システム(APM)を使って移動することができる。
本館は保安検査を抜けるとガラス張りの開放的な空間に、高級ブティック店が軒を連ね、紅茶の名店がカウンターバーを開き、洗練されたレストランや馴染のカフェは大勢の旅客で賑わっている。
夏の旅行シーズンも相まって世界首都ロンドンが持つパワーや勢いがヒースロー空港からも伝わってくる。
無人運転車「ヒースローポッド」
2011年にヒースロー空港は、ターミナル5と駐車場を結ぶ無人運転車「ヒースローポッド」の提供を開始した。
空港の北東にある駐車場(ヒースローポッドパーキング・ターミナル5)とターミナル5をヒースローポッドと呼ばれる無人運転車両に乗って移動できるシステムである。乗車定員は5名、所要時間は4〜6分、無料で利用することができる。ただし、駐車料金は1日あたり55.70ポンドとなっている。
利用手順は簡単で、乗降場所の前に設置されたタッチパネルスクリーンを2,3回操作するだけ。あとはすべて自動でドアが開閉し、移動し、停車する。すべて電気で稼働しているため、静かで乗り心地もよく、環境負荷も少ないスマートかつサスティナブルな乗り物である。
ヒースローポッドがあれば、駐車場がターミナルから少し離れていても、移動の負担は抑えられるように思える。移動中も滑走路から飛び立つ航空機や旅客ターミナルビルを眺めることができるため、乗車時間も気にならない。
ターミナルに近い駐車場の敷地を確保することが困難な空港にとって、1つの解決策になる可能性があるものの、2011年の導入以降でサービス拡張していないヒースロー空港を考えると費用対効果としては厳しい側面もあるのかもしれない。